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リモートワークをしながらマルタに1年間滞在できる「デジタルノマドビザ」とは

2021年6月、マルタ共和国は世界のリモートワーカーを対象に、いわゆる「デジタルノマドビザ」の発給を開始した。

「Nomad Residency Permit」と呼ばれる滞在許可証だが、これを取得すればリモートワークをしながらマルタに1年間滞在を許可される。要件を満たしていれば1年後の更新も可能で、家族の同伴も可能だ。

マルタはEUからのデジタルノマドには既に人気の滞在先のひとつだが、デジタルノマドビザを発給する事でEUに限らず、世界中のリモートワーカーに広く門戸を開いた事になる。

デジタルノマドビザとは

近年、オフィスに通勤せずパソコンとインターネットを使って自宅やコワーキングスペースなどで業務をこなすリモートワーク、テレワークという働き方が世界中で浸透しつつある。コロナ禍でこの傾向が後押しされたのは言うまでもない。

ビデオ会議ソフトやチームメンバーのコミュニケーションを改善するコラボレーションツールが普及し、効率的にリモートワークをする環境が整っていく中、人々は仕事続けながら好きな場所に住むという選択肢を手に入れた。

デジタルノマドビザとは、このようなリモートワーカーを対象に、その国でリモートワークをしながら長期滞在を可能にするビザや許可証の事である。期間や条件は国によって異なるが、大体どの国のデジタルノマドビザも6ヵ月~数年の滞在が許可される。

多くの国がデジタルノマドビザを発給する背景

デジタルノマドビザ

2022年2月現在、外国人のリモートワーカーを対象に滞在許可を提供している国は30か国以上に及ぶ。特にヨーロッパではコロナ禍以降、デジタルノマドビザの発給を始める国が相次いでいる。

2020年にはエストニア、ジョージアがデジタルノマド向け滞在ビザを発行し、その後クロアチア、マルタ、ギリシャ、アイスランド、ルーマニアが続いた。

背景には、コロナ禍で外国人観光客が激減し、観光が大きな収入の割合を占めている国々が経済的に大きなダメージを受けた事がある。今後もしばらくは短期であちこちの有名観光地を訪れるような旅のスタイルは敬遠される傾向が続くだろう。

同時にリモートワークが新しい働き方として普及した。通勤圏で生活しなければならないという制約から解放され、新たな体験を求めて生活の場を移す人が増えた。

安定した収入のある外国人リモートワーカーに対し、仕事をしながら長期滞在してその国の生活を楽しむ「プチ移住」の機会を提供し、国内での消費、経済の活性化に期待するという事であろう。

因みにデジタルノマドビザの取得には最低月間収入額が定められている。例えばジョージアは月に最低2000 USD、エストニアは3504 EUR、クロアチアは16907.5 HRK (約2650 USD)の収入がある事が条件となっている。これは、現地の人の平均収入よりかなり高めに設定されている。また医療費は国の負担とならないよう、自分で健康保険に加入する必要がある。

日本政府もデジタルノマドビザの発給を検討

実は日本も、訪日外国人の誘致とITスタートアップの活性化を視野に、デジタルノマドビザ発給を検討している (日本経済新聞)。

これまで観光ビザで許可されていた90日の期間を超えて、リモートワークをしながら日本に滞在する事が可能になるが、具体的な内容はこれから議論されていく。長期滞在のリモートワーカーの受け入れ体制を上手く整えられれば、デジタルノマドビザは地方創生にも大いに貢献できるだろう。

マルタがデジタルノマドに人気な理由

マルタはイタリア最南端のシチリア島からほど近い、地中海の真ん中に位置する小さな島国である。

美しい海に囲まれ、首都ヴァレッタは街ごと世界遺産になっているほど歴史ある建造物が多くあり、観光地として有名だ。気候も温かく、ヨーロッパのリモートワーカーが多く移住している。

住みやすさという点でも、北・西ヨーロッパと比較すると生活物価が比較的安く、治安が良い。英語が公用語なので意思疎通がしやすい事も大きな理由である。因みにマルタには多くの英語学校があり、日本人の英語留学先としても人気がある。

マルタのデジタルノマドビザの取得条件

マルタの「Nomad Residency Permit」を取得するには条件があり、リモートでできる仕事をしていて2700EURを超える月収がある事を証明しなければならない。またマルタ国内で有効な健康保険に加入している事、住居(賃貸契約など)を確保している事も条件となる。さらに申請者に対してはバックグラウンドチェックが行われ、これにパスする必要がある。詳細や申請方法はResidency Maltaのウェブサイトで確認できる。

リモートワーカー誘致のためのマルタの取り組み

マルタのデジタルノマドビザ

2022年1月にマルタの「Nomad Residency Permit」発行機関であるResidency Malta Agencyがオンライン会見で公開した情報によると、発給を開始してから半年間の申請数は180人。イギリスからの申請が最も多く、続いて米国、インド、中国と続く。日本からの申請も数件あった。コロナ禍で多くの国で科されている渡航制限が解除された後、より多くの申請を期待していると言う。

ノマドコミュニティとの連携

マルタには主にEU出身のデジタルノマドのコミュニティがあり活発に活動している。着目すべきなのは、マルタ政府はこのような現地に住むデジタルノマドのコミュニティと連携し、協力を得ながら世界のリモートワーカーを誘致する取り組みを行っているところだ。デジタルノマドビザの発行に至るまでにも彼等の意見を取り入れてきた。

Malta Digital Nomad Association はマルタ在住のノマドが中心となり、様々な情報を発信し、コミュニティを形成する役割を担っている。先に触れたResidency Malta Agencyがオンラインで行った会見においても、政府機関の関係者だけでなく、コミュニティを代表するノマド達が参加し情報を発信していたのが印象的であった。

ノマドとは
ノマドとは

Meerkat編集部 (Miho Beck)https://flyingmeerkat.com
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