働き方の変革
新型コロナウイルスの影響を受け、働き方に変革が起きている。
今まで会社へ出社し行っていた作業や会議は、自宅で行えるようになった。事実、業態によっては従来通りの生産性を保つことが出来、寧ろ、通勤時間や人との交流が減る為作業効率が上がる場合もある。
リモートワークは企業にとってもメリットが大きい。例えば、通勤が無くなったことによる交通費の削減や、オフィスの家賃、デスクや椅子など、企業コストを下げることが出来る。米国企業Twitter社は2020年5月、永久的にリモートワークを導入する事を発表した。今後も右に倣う企業は増えてくるだろう。
一方、休業する企業や失業者が増えたことも事実である。そこで、本業の収入を支えるための副業や、企業や場所、時間などに囚われずに働けるフリーランスという働き方が人々の注目を集めた。
このように、一つの仕事に長期就業することや、オフィスへの通勤、決まった時間での出勤など、多くの企業や人々の間で当たり前とされてきた従来の働き方が見直され始めた。
さらに、革新的なIT技術の発展も手伝い、インターネットさえあればどこでも簡単に働くことが可能となった。そこで注目を集めているのが『デジタルノマド』という人々である。
デジタルノマドとは
デジタルノマドとは、パソコンや携帯などのデジタル機器を使って仕事をしながら旅をする人々のことを指した新しいライフスタイルである。元々ノマドとは「遊牧民」という意味で、家畜が食べる草を求めて移動するのに従って住む地を転々として暮らす民の事を指すが、現代のノマドはインターネットを通じて場所にとらわれず働いている。
インターネットが通じている場所であれば、海外でも、カフェやコワーキングスペースでも、自分の好きなところで働けるのがその特徴である。
仕事内容
デジタルノマドと呼ばれる人々はどのような仕事をしているのだろうか?
IT機器を使用するという共通点を除き、その業態や職種は多岐にわたる。
まずフリーライターと呼ばれるような働き方の人々。彼らはその道のエキスパートとして手に職を持っている。例えば、WEBライターやブロガー、翻訳作業などの仕事から、エンジニア、WEB制作、プログラマーなどIT系の仕事。さらに、フォトグラファーやイラストレーター、グラフィックデザイナーなどのアート関係の仕事等その職種はさまざまである。
次に、最近増えてきたのが企業に勤めながらデジタルノマドとして働く人々。コロナ以降、大手企業を中心に続々とリモートワークが浸透。その結果、フリーランスとしてだけでなく、企業で雇用されている人も好きな場所で働くことが可能となった。
その例として、アメリカではTwitterやAmazon、Wikipedia。日本企業だと、富士通やKDDI、日産などが挙げられる。社員のリモートワークに対応するインフラを整えていかなければならないが、リモートワークを実現するためのツールやサービスを提供するスタートアップも勢いづいている。(コロナ禍で思わず世界の定番コミュニケーションツールとなったZoomなどは良い例では?) リモートワークという概念は今後も益々定着していくことだろう。
デジタルノマド的ライフスタイル
働く場所や時間にとらわれないデジタルノマドと呼ばれる人々はどのような場所で、どのようなライフスタイルを送っているのだろうか。
デジタルノマドの滞在場所
彼らの“仕事場”として人気が高いのが、物価が安く暖かい国、例えばバンコクやリスボン、メキシコシティなどである。安心して安く借りられるAirbnbなども短期移住者を後押ししている。
さらに、最近ではデジタルノマドを積極的に受けようという動きもあり、デジタルノマドワーカーに対してビザを発行する国が増えてきている。
アンティグアやバルバドス島などのカリブ海の国々を始め、クロアチアやチェコ、エストニアなどのヨーロッパの国々がその代表である。
収入証明などの条件さえクリア出来れば、最長で2年のビザを手に入れることも可能であり、基本的に観光ビザで移動を繰り返すノマドワーカーにとってそれはとても有り難い政策である。
コリビングという暮らし方
従来、企業に勤め、家や車を買い、一つの場所に留まることが社会規範とされていた。
しかし、働き方や生き方について抜本的な見直しが問われる現在、コリビングという新しいライフスタイルへの注目が集まっている。
コリビングがどのようなものかというと、「異なる職種の人々が同じ空間で仕事をするコワーキングスペースと、同じ屋根の下で暮らすシェアハウスが組み合わさった施設」と想像してもらうと分かりやすいだろう。ここでは快適に仕事をする為のインターネットやワーキングスペースが設けられていたり、ジムやプールなどの施設も充実している。
コリビング施設では人との交流が重要視されていることもあり、イベントに力をいれている施設も多い。ヨガやフィットネスに加え、異業種間での意見交換会などが頻繁に催されている。ロンドンのThe collective、アメリカのOutside、リゾート地バリのOutpostなどが有名である。ここでは人種や職種を超えたグローバルなコミュニティーを持てることが特徴だ。
これらの背景には、核家族や少子高齢化が進み、仲間やコミュニティーを持つことが年々難しくなっていることや、コロナ禍でリモートワークが浸透してきたことが挙げられる。さらに、働き方に対しても、辛く厳しいものから、楽しみながら働くという働き方にシフトチェンジしており、そういったことからこのような施設が若い世代を中心に人気を集めている。
デジタルノマドのこれから
新型コロナウイルスの世界的大流行により、今までの常識や生活が一変した。職を失くす者、職を変える者。オフィス出勤から、リモートワーク。終身雇用から、フリーランス。集団から個人に。多くの人が感じたのは、これから自分の人生をどう生きていくか、ということではないだろうか。
周りに流される人生より、自分がやりたいことをやり、行きたい場所に行き、好きな時間に仕事をする。幸運にもIT産業の発達により、いつでもどこでも働くことが可能な時代となってきた。人々は国や、言葉の壁を乗り越え、今後益々このようなライフスタイルにシフトチェンジしていくことだろう。
住所不定、軽やかに旅をしながら生きていく。そんな時代がくる日もそう遠くはないだろう。