spot_img

2021年旅行業界のトレンドキーワード

多くの人がパンデミックが収束し、旅行に出かけられる機会を待ち望んでいる。しかし、少なくとも感染への恐れが人々の意識から完全に消え去るまでは、旅行業界には以前とは違ったアプローチが求められる。そのいくつかは今後もニューノーマルとして存続し、旅行ビジネスに変革をもたらすであろう。注目すべき2021年の旅行トレンドキーワードを探ってみたい。

衛生管理 & 非接触型サービス

旅行業界トレンド 衛生管理と非接触サービス
Photo by Proxyclick Visitor Management System on Unsplash

パンデミック以降、ホスピタリティ産業には外食産業と同様に、ソーシャルディスタンスや非対面・非接触サービスへの真摯な取り組みが求められている。グローバルなホテルチェーンでは、衛生管理と非接触型サービスがもっとも重要なブランド価値となった。

ヒルトンは、米国を代表する医療機関 メイヨー・クリニック、消毒剤メーカーのLysolと提携、「ヒルトン・クリーンステイ・ウィズ・Lysolプロテクション」プログラムを2020年6月から6,100の施設で実施している。「ヒルトン・クリーンステイ」プログラムには、客室ドアの清掃済みシールサイン、科学的アプローチによる清掃、デジタルキーによる非接触チェックインなどが含まれる。

マリオット・インターナショナルは、7,300の施設のより高い衛生水準を実現するためにグローバル・クリーンリネス・カウンシルを設立。カウンシルは、感染症など様々な専門家で構成され、新しい衛生基準や病院レベルの静電スプレーによる消毒などを導入する。ハイアットやアコーでは、第3者機関による衛生基準認定プログラムを開始している。

国内ホテルに導入されている非接触型チェックインには、フロントの専用キオスク端末を使用するものと、おもにゲストのスマートフォンのアプリでセルフチェックインする「スマートPMS® tapAppli」「aiPass (アイパス)」などがある。

後者はアプリから事前チェックインが可能で、QRコードをフロントの専用端末にかざしてカードキーを発行して入室。チェックアウトも客室から行い、ルームキーを客室に残してフロントに立ち寄らずに出発できる。

ノマド生活
デジタルノマド生活

サステナビリティ

旅行業界トレンド サステナビリティ
Photo by Nick Fewings on Unsplash

パンデミックは人々の環境に対する意識を高めるきっかけにもなった。サステナビリティに配慮していることが宿泊施設を選ぶポイントのひとつになっていくだろう。水の使用量・カーボン排出量・ごみを減らす取り組み、リサイクル素材や地元の食材の使用など、消費者のエシカルな視線に敏感に応えることが、ホスピタリティブランド戦略に欠かせない時代となっている。

京阪電鉄を運営する京阪グループは2019年12月に、京都四条河原町に上層にホテルを併設した複合施設 GOOD NATURE STATIONをオープンした。有機野菜や生鮮食品マーケット、施設内の生ゴミ堆肥を使用した循環農法の食材を使ったレストラン、「サスティナブルコスメアワード」を受賞したオリジナルコスメブランド「NEMOHAMO」などが出店している。GOOD NATURE STATIONでは、持続可能な「LEED認証」とウェルネスな環境認証「WELL認証」をホテルで初めて取得している。

2020年8月にリニューアルオープンした山形県庄内の田んぼに浮かぶホテル SHONAI HOTEL SUIDEN TERRASSEも、ゲストの感性にサステナビリティを訴えかける施設だろう。この田園風景に美しく溶け込む木造ホテルを設計したのは、紙管素材で有名な日本を代表する建築家の坂茂。SUIDEN TERRASSEでは、自社農場を活用した農業体験プログラムも用意。館内の“Farm to Table”がテーマのレストランでは、農場で栽培した有機野菜を使った料理が楽しめる。

世界85か国以上の約700の独立系ホテルが加盟する Preferred Hotel Groupは、2020年11月、新しいサステナブルホテルブランド「Beyond Green」を発表した。世界各地の24のホテルは、環境に配慮した取り組みだけでなく、生物多様性と文化遺産の保護、地元の人々の生活向上など、ホスピタリティ業界が果たすべき重要な責任を評価して選出された。

ワーケーション

在宅勤務やリモートワークの普及により、どこでも仕事ができる環境が一般化してきた。観光産業に依存してきた国や地域では、ワーケーションをインバウンド誘致の有力な手段と考えているところも少なくない。ホテルや自治体などが様々な事業者とコラボして、独自のワーケーションパッケージを提供するケースも増えている。

JTB沖縄は、2020年11月に沖縄特化の定額制ワーケーションサービス「Re:sort@OKINAWA」を発表。県外在住者向けに、年間3万円でコワーキングスペース、ホテル、航空便、レンタカなどの複合サービスパスを提供する。2021年2月には、コンドミニアムタイプのホテルと提携し、30泊10万円の宿泊プランも開始した。

2014年に設立された米国シカゴのスタートアップ Remote Yearは、世界中を旅しながら仕事を続けられるワーケーショントラベルプランを提供している。旅行先は、ヨーロッパ、アフリカ、アジア (日本を含む)、ラテンアメリカで、1ヶ月 $2,000、4ヶ月 $12,000、12ヶ月 $32,000のプランがある。料金にはフライト・交通費、宿泊費、コワーキングスペース、Wi-Fi接続、アクティビティなどが含まれる。

Remote Year ウェブサイト

Remote Yearは、資金調達総額が$17Mに上るなど順調な成長を見せていたが、パンデミックにより海外渡航を前提とする事業は大きな打撃を受けた。2020年10月に、デジタルノマド向けコリビングのSelinaがRemote Yearを買収、リモートワークカテゴリーの2つの主要ブランドが統合された。

ロンドンを拠点とするSelinaは、2012年に2人のイスラエル人によって設立され、サブスクリプションベースのモデルで$395Mの資金を調達している。Remote Yearは、買収後も独自のブランドとして運営され、19か国と3大陸にまたがるSelinaの宿泊拠点をワーケーショントラベルに使用する。Remote Yearは、ソーシャルディスタンスに配慮した遠隔地での短期「リトリート」プログラムを開始した。

アウトドア & マイクロツーリズム

2021年旅行業界トレンド アウトドア
Photo by Jamie Fenn on Unsplash

withコロナでは、人で混みあう空間を避ける旅行や観光が人気となった。海外旅行の代わりに自宅や家の近くでホリデー体験をするステイケーション、星野リゾートが提唱する地元を再発見するマイクロツーリズムや、キャンプやグランピングなど、自然に触れて気分をリフレッシュできるアウトドア体験に注目が集まった。

Airbnbの2020年6月と8月の予約・検索データ分析では、「貸切の宿泊施設で納屋・小屋・コテージが人気」で「近郊の宿泊先を直前に予約」「グループ旅行がトレンド」で「ペット同伴可」の条件が最も検索されたとのこと。Airbnbの2020年のビジネスは、遠出して人気観光地を周る旅行から、近場でゆったりと楽しむ旅へという消費者トレンドに支えられたと言えるだろう。京都などの人気の観光地に旅行者が集中する、オーバーツーリズムの解消も期待される動向だ。

公共交通機関や宿泊施設に頼らずにアウトドアトリップができる、キャンピングカーの人気も高まった。レンタル需要の高まりや、それまで日本では人気のなかったトレーラータイプも注目を浴びるようになった。低価格で広い居住空間のあるトレーラーは、災害時のシェルターやリモートワークのホームオフィスとしても使える多機能性が認知されたようだ。

デジタルツアー & パーソナライズ

2021年旅行業界トレンド
Photo by Victor He on Unsplash

パンデミック後のバケーションでは、不特定多数の大人数が集まる団体ガイドツアーは敬遠され、よりプライベートでパーソナライズされたツアーや、モバイルアプリによるセルフガイドツアーが注目されるだろう。

ルーマニアを拠点とする都市ゲームのスタートアップ Questoは、2021年2月に$1.5Mの資金調達ラウンドを完了したことを発表した。同社は、Destination AsiaやJTB、Arabian Adventuresなどの旅行サービス企業と協力して、タイ、日本、アラブ首長国連邦で都市ツアーゲームを開発している。2021年中に200の都市に到達することを目標にする。

Questoは、観光客や地元の人々がモバイルアプリを使って街を発見し、学ぶことができる都市探検ゲームを提供している。プレイヤーは、身の回りの状況に基づいて課題や謎を解き、新しい場所やストーリーを解き放ち、現実の都市を探索する。

自分たちでグループを構成するプライベートツアーなら、旅行中は信頼できるグループ内で過ごすバブルトラベルが実現できる。プライベートツアーでは、現地のガイドと一緒に過ごす時間が長くなるので、より深くその土地のストーリーを理解することも可能になる。

Adventures by Disneyによる「プライベート・アドベンチャーズ」では、12人までのグループが、コスタリカ、エジプト、ギリシャ、イタリア、ペルーなどの特に人気の高い旅行先から、プライベートツアーを予約できる。

アドベンチャーツアーを運営するG Adventuresは、「Book Your Bubble Collection」を発表した。このコレクションは、詳細な旅程、宿泊施設、地元ガイドなど、少人数の旅行と同じメリットを提供する80のプライベートツアーで構成されている。世界各地への少人数グループ旅行で知られるIntrepid Travelは、2020年の最後の3ヶ月で前月比41%の増加を記録したことを発表した。

2021年 旅行業界のトレンド まとめ

人はふれあいを求めて旅をする。旅行業界において、感染症のリスクをゼロにすることはできないだろう。ニューノーマルの旅行では、人が密集する場所よりも、開放的なアウトドアでの自然体験が人気になることは当然の流れだ。これは、遠隔地や里山などが新たなデスティネーションになるかもしれないということ。意識が変わればチャンスの場所も変わるはずだ。

Meerkat編集部 (Miho Beck)https://flyingmeerkat.com
Flying Meerkatでは、デジタルノマドに代表される新しい旅のスタイルやコロナ後の旅行業界のトレンド、それを支えるスタートアップの情報を中心に、世界のトラベルテックやホスピタリティに関する最新の話題を配信しています。

関連記事

Follow Us

Most Popular

spot_img